「Personal Structures」展、JOSHIBI PORTRAITS in Veniceが終了いたしました
ベネチアにて開催された「Personal Structures」展が、11月24日をもちまして全日程を終了いたしました。本展では、女子美術大学の理念や研究教育活動について、世界に向けて発信する企画を2期に分けて実施いたしました。
第1期では、未だにアート界に残るジェンダーギャップについて焦点を当てながら、日本における女性の美術教育に言及し、先駆的な女性美術家として本学卒業生である画家三岸節子氏の生い立ちに触れた内容にて展示いたしました。第1期についてのレポートはこちらをご覧ください。
「Personal Structures」展の第2期を開催
第2期では「女子美術大学における刺繍教育の歴史と日本における女子大学の現在」をテーマに、創立当初から存在していた「刺繍科」に着目した展示を行いました。
左の壁面には、本展の概要について。中央の壁面では、女子美の刺繍教育の歴史について。右の壁面には、「刺繍教育と研究の継承から現在の染織品修復技術の確立まで」とし、女子美の染色文化資源研究所や陸前高田修復プロジェクトについて触れました。
創立当初女子美には、日本画科・ 西洋画科・彫塑科・蒔絵科・編物科・造花科・刺繡科・裁縫科がありました。女子美は、刺繍科を単なる技能科としてではなく、「芸術」としての価値を高めました。刺繍科は1900年から続く女子美の3つの建学の精神、「芸術による女性の自立」、「女性の社会的地位の向上」、「専門の技術家・美術教師の養成」を確固たるものとして確立させた学科とも言えるでしょう。
そして現在ではその功績が国内外で新たな交流を創り出しています。
2012年からは津波で被災した岩手県陸前高田市立博物館の資料から救出した染織品の保存修復プロジェクトを行っています。2016年には染色文化資源研究所も設置され、刺繍技術を生かした染織品の保存修復や調査研究にも力を入れています。刺繍教育は現在も女性の社会進出に貢献してきたのです。
刺繍教育について本展では、染色文化資源研究所代表の大﨑 綾子先生(女子美術大学 芸術学部 デザイン・工芸学科 工芸専攻 教授)にもご協力いただきました。
展示最後のセクションには、女子美と同じ年に創立された女子大学である津田塾大学の髙橋裕子学長と本学の小倉文子学長の対談動画を上映しました。本対談では「女子大学」が日本社会においてどのような役割を果たしてきたのかを考え、その未来について議論しました。
本展を通して、日本における女性と芸術の歴史の一端について発信することができたと思います。
JOSHIBI PORTRAITS in Venice
女子美ラボの活動の一環として企画している「JOSHIBI PORTRAITS」展は、本学で学ぶ在学生たちが、どんな世界を眺め、どんなことを考えながら制作をしているのかを社会に紹介する展覧会シリーズです。
なんと今年は、既に紹介した渋谷展だけでなく、ベネチアでも実施しました。
「JOSHIBI PORTRAITS in Venice」は、Personal Structuresが開催されているPalazzo Bemboにて8月28日から9月4日にかけて開催されました。「JOSHIBI PORTRAITS」としては、今回が初の海外での展示となります。
女子美ラボの活動の根底にある「アート・ジェンダー・教育」といったテーマに関連する内容が含まれる作品も多く見受けられ、あらゆる表現で自らを見つめ、「新たな自分の見え方」に触れることのできた展覧会になりました。
「JOSHIBI PORTRAITS in Venice」についてもっと知りたい方は、こちらから参加学生のインタビュー・ショート動画をご覧いただけますので是非チェックしてみてください。
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芝崎理香子さん
田之上 愛佳さん
杉本 花 さん
コウ ロ さん
ミラノ研修・卒業生交流会
本学のミラノ夏期研修に参加した学生14名とイタリア・フランスで活躍する卒業生との交流会を女子美ラボが企画し、9月にヨーロッパ文化センターが所有するベネチアのパラッツォ・ミカエルにて開催いたしました。
在学生が実際に海外で活躍する女子美卒業生と話す機会は、女子美生同士のネットワークを強化するだけでなく、グローバルキャリアや海外でチャレンジすることをより身近に感じてもらうことを目的としました。
学生は自身の作品についてのプレゼンテーションを行い、卒業生とディスカッションや海外でのキャリアに関するアドバイスを得て、グローバルな視野を広げることができました。
これらのプログラムにより、女子美術大学は日本の女子大学の可能性を世界に示し、その存在意義や取り組みを広く発信しました。
また今回のPersonal Structures 2024におきまして、女子美ラボが企画した展示が、大学および研究部門の国際審査において最終候補に選出されました。惜しくも受賞は逃しましたが、本展での取り組みが国際的な評価を得られ成果を残せたことは、女子美ラボとして大変意義のある活動となりました。
今後も女子美ラボは、女性の自己実現とエンパワーメントを支援する企画を通じ、社会に新たな価値を提案していきます。
女子美クリエイティブ・ラボラトリー助手。東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻博士後期課程修了(2023年度)。女子美術大学アートプロデュース表現領域にて修士と学士。1938年に行われた児童画コンクール「日独伊親善図画」の研究をしながら、展覧会のキュレーションや執筆活動なども行っている。平成29年度(2017)第11回女子美ミラノ賞受賞。