「スペインに女子大があるとすれば ある意味 異質なものになるでしょう」
女子大という教育機関についてスペイン・バスク州アーティスト

女子美ラボでは初回の企画として、スペイン・バスク州のビルバオを拠点に活動する若手アーティストのNatalia Suárezさんにインタビューし、ご自身の制作に影響を与えているものについてや、女子大学についてどう思うかなどを伺いました。女子美術大学は今年度アーティスト・イン・レジデンスのパイロットプログラムを実施し、Nataliaさんには本学での初めての受入れアーティストとして、2カ月間滞在制作を行っていただきました。

※スペイン・バスク自治州ビスカヤ県は若手アーティストの発掘と展示機会の創出を目的に「ERTIBIL BIZKAIA」というアワード事業を実施して受賞アーティストのアーティスト・イン・レジデンスへの派遣を行っています。

(女子美ラボ)

ナタリアさん: 私の名前はナタリア・スアレスです
スペイン北部 バスク地方のビルバオを拠点にアーティスト活動をしています
日本には2か月ほど滞在中です
私は主に油絵やドローイングをしています

──日本での滞在制作について

ナタリアさん: 日本での滞在中は 今までスペインでやってきた制作プロセスを継続しようと考えていました
それは大きな作品をシリーズで描くということです
でも日本に来て その方向性を変えてみることにしました
ここでは小さな作品をシリーズで制作しています
私が思うに シリーズを作る時に大切なことは 広い考えを持つことです
なぜなら油絵制作には乾かす工程があり その間は時間があるからです
つまり 作品を乾かす時間を使って他の絵に取り掛かることができるわけです
最近 シリーズで作品を作るようになったのは その制作過程で発見があるからです
一つのアイディアに対して違ったアプローチをすることで
何か新たな発見をすることができます

──「女子大」という教育機関について

ナタリアさん: 100年前の当時 女性だけの教育機関を作ったのは理にかなっていると思います
当時は女性にとって教育を受けることが難しかったでしょうから
ですので 女子大が作られたのは良いことだと思います
しかし おそらくですがスペインに女子大は存在しません
小学校や高校であれば スペインにも女子校はあります
しかし そういった女子校はカトリック教の学校である場合が多いです
私は男女共学の環境で育ったので そういった世界は全く未知のものです
なのでスペインに女子大があるとすれば ある意味 異質なものになるでしょう

──自身のアートに影響を与えたもの

ナタリアさん: 私は小さい頃からスペイン語ではなくバスク語で教育を受けていました
小学校から高校 そして大学までバスク語で勉強しました
バスク語は私の使う主な言語ですが それは両親から学んだものではありません
私の両親はスペイン語しか話さないのです
なのでバスク語は主に学校で身につけました
私の地域ではバスク語が主な言語なので 学校で学べて良かったです
そういった環境のもとでバイリンガルになれたのは幸運なことでした
そして バスク州の大学に在学中
私は1970年代のバスクのアーティストが巻き起こした芸術運動に影響を受けました
このアートムーブメントのお陰でバスク発の芸術の独自性が確立されました
70年代以降の世代も この芸術運動から様々な影響を受けています
なので バスクで学生時代を過ごしたことで バスクの芸術に触れることができました
その体験が大学生活で得た一番大きな収穫でした
このバスクの芸術運動は主に彫刻に関するものでしたが
もちろん他の芸術にも応用することができます
そういった学生の時の体験以外で私が影響を受けたのは
ギャラリーやアンダーグラウンドでのアートの数々です